そういえばテレビ番組で、本物か偽物かを当てる番組がありましたね。目隠しをしてプロの演奏とアマの演奏を聞きます、最初の演奏と後の演奏がプロなのかアマなのかは視聴者も分かりません。

でも視聴者には、途中からネタバラシがされます。観ていて面白い番組なので、私もよくこの番組は観ていました。そしてこうも思っていました、真実を聞き取る繊細な感覚は、凡人には分からないということです。

そして大切な秘密は、誰にも教えない方がいいかも知れません。

今回紹介するギリシア神話は、音楽の話です。登場人物は、ミダス王、音楽の神アポロン、野原の神パン、山の神トモロス、床屋さん、です。

森でのんびり暮らすようになったミダス王、いろんな出来事がありセレブな生活に終止符をうちました。そして野原の神パンと仲良くなりパンのことを芯からあがめていました。

ある日野原の神パンが、とんでもない事を言い出したのです「そうだ音楽の神アポロンと、どっちが上手いか演奏しよう」

もちろん判定する人物も探します、そして決まったのが山の神トモロスでした。演奏会は厳かに始まります「さあ、どうぞ」最初は野原の神パンの演奏です。

パンは笛を奏でます、ほのぼのとした暖かい音楽です。ゆっくりとした笛の音色が、心地よく感じます。この演奏を聞いていたミダス王も、素晴らしい音楽だと感心していました。

次の演奏は音楽の神アポロンです。今日のアポロンは月桂樹の冠をかぶってます、楽器はたて琴です。アポロンの演奏が始まりだすと森の木々や草花そして野鳥まで集まってきます。

幻想的で神秘的、アポロンの音楽の宇宙に吸い込まれそうになります。そして山の神トモロスが「これはアポロンの勝利!」と判定しました。

でもそこにいたミダス王は、この判定に意見します「それはおかしい、判定を取り消してください」と言ったのです。

アポロンは「私の演奏の良さが分からぬなんて愚かな耳だ、耳として許せん別のものにしてやる」と言うと、ミダス王の耳がドンドン違う形に変化していきます。

あらあらミダス王の耳は、ピーンとのびたロバの耳になったのです。なんてことだとミダス王は思いますが、次の瞬間別の事を思うのです。まあいい、耳なんてターバンを巻けば見えなくなる。

毎日ロバの耳を隠すために、帽子をかぶったりターバンを巻いたりとバリエーションをつけて誰にも悟られないようにしていました。でもこのミダス王の耳の秘密を、知っている人が一人だけいました。

それは床屋さんです。ミダス王はこの床屋さんにロバの耳のことを、口止めしていました「この耳のことは誰にも言ってはいけない、もしも約束を破ったらただではすまないからね」

でも床屋さんはロバの耳のことを、言いたくて言いたくてたまりません。だから地面に穴を掘りその中めがけて「王様の耳は、ロバの耳!」と叫んで、気持ちを落ち着かせていました。

その後この地面には、草木が生えます。そして草木が風になびくと聞こえるのです「王様の耳は、ロバの耳」